白血病タイピング検査概論

6. データの見方・考え方

解析領域の設定と結果解釈(図12)
CD45ゲーティングと散乱光ゲーティングを組み合わせて芽球の表面抗原解析を行う(図上段)が、この測定結果は芽球の特徴を表すものであって芽球の割合を示すものではない。
同じ抗体の組み合わせによる解析であっても解析ゲートの設定を変えることで、検査材料中の芽球(CD34+CD117+)や成熟単球(CD14+CD11b+)の割合を知ることができる(図下段)。
ただし、多染性赤芽球や正染性赤芽球は溶血操作によって裸核化され(図Ⅴ-6参照)解析ゲート内から外れると考えられるので、結果の解釈は目視分類による骨髄中の赤芽球比率を考慮する。

図12 解析領域の設定と結果解釈


6-2. B細胞系腫瘍症例

表面免疫グロブリン重鎖とB細胞分化(図13)
免疫グロブリン重鎖の解析が成熟リンパ球腫瘍の細胞起源及び病型を考える上で重要になっている。
B細胞はpro-B細胞の段階で免疫グロブリン重鎖遺伝子の再構成が開始され、pre-B細胞の段階で免疫グロブリン軽鎖遺伝子の再構成に成功した細胞が成熟B細胞へと分化する。
胚中心(Germinal Center)で抗原刺激を受けた成熟B細胞は、免疫グロブリン遺伝子V領域に体細胞突然変異を生じ抗原との親和性が向上した細胞へと分化する。
現在、体細胞突然変異を有するものがmemory B細胞、体細胞突然変異の見られない成熟B細胞がna ve B細胞と考えられている。胚中心では免疫グロブリン重鎖のクラススイッチも起り、クラススイッチしたB細胞はmemory B細胞である。

末梢血B細胞の90%はIgM+で、その大半はIgM+IgD+ のna ve B細胞であり、IgM+IgD- B細胞には体細胞突然変異が認められるためmemory B細胞と考えられている。
IgM+IgD+B細胞でもCD27+を示すものはmemory B細胞であることが分かっている。CD5+B細胞はIgM+IgD-である。

図13 表面免疫グロブリン重鎖とB細胞分化

CD5発現と体細胞突然変異の有無からみたB細胞腫瘍(図14)
B細胞にはCD5+(B1)とCD5-(B2)細胞があり、その分化経路は異なると考えられている。
大部分のB細胞腫瘍は体細胞突然変異を起こした後のmemory B細胞由来と考えられるが、CD5+DLBCL、B-CLL、MCLの多くはna ve B細胞由来と考えられている。

図14 CD45発現と体細胞突然変異の有無からみたB細胞腫瘍

免疫グロブリン軽鎖を欠いた悪性リンパ腫症例(図15)
免疫グロブリン軽鎖の偏りは、B細胞性リンパ腫のクローナリティ判定に重要である。
しかし、症例の中に免疫グロブリン重鎖を発現するが軽鎖を発現しない症例がある。
筆者が経験した症例では、免疫グロブリン重鎖のタイプがIgM+/IgD+の症例はなくすべてクラススイッチしていたことから、免疫グロブリン軽鎖の欠損は胚中心における体細胞変異の時に生じたものと推測される。

図15 免疫グロブリン軽鎖の発現を欠いた悪性リンパ腫例