白血病タイピング検査概論

1. はじめに

造血器腫瘍の患者の診断の端緒は、風邪や倦怠感などで医療機関を受診し血液スクリーニング検査で診断されることが多いが、近年では、健康診断で末梢血一般検査の異常値や画像・超音波検査でリンパ節腫脹や脾腫などを指摘され来院するケースも少なくない。

スクリーニング検査としては、CBCの8項目(WBC、RBC、Hb、Ht、MCV、MCH、MCHC、Plt)で、2系統か3系統の異常値を呈することが多いが、白血球数の異常だけのこともあるし、悪性リンパ腫などでは全く正常のこともある。
多くは、白血球数の増加または減少、正球性貧血、血小板減少の3系統の異常を示すことが多く、そのパターンは進行度によって様々である。 全自動血球計数装置による白血球分画のスキャッタグラムのパターン異常により、末梢血塗抹標本を観察すると、造血器腫瘍細胞の出現が認められる。
CBC異常パターンまたは異常細胞の出現により骨髄検査やリンパ節生検検査などの精査をすすめていくが、末梢血に造血器腫瘍細胞が認められるときは、まず細胞表面マーカー検査を行うと診断が早く、その後の検査の進め方に的確な情報を与えてくれる。
その場合も骨髄穿刺を必ず施行し、染色体検査と細胞表面マーカー検査、できれば遺伝子診断用のサンプルも採取し、推測される遺伝子異常を検査する。

白血病や悪性リンパ腫などの造血器腫瘍の診断には、光学顕微鏡で血液塗抹標本における細胞の形態観察をする形態学的診断(morphological diagnosis)と、フローサイトメトリーを用いた細胞表面マーカー検査による免疫表現型病型診断(immunophenotyping)及び、染色体/遺伝子検査による核型診断/遺伝子診断(karyotyping/genotyping)の三者が不可欠である(表1)。

表1 造血器腫瘍の診断

特に、フローサイトメトリーを用いた細胞表面マーカー検査や細胞質内抗原検索は、迅速・簡便に造血器腫瘍の細胞帰属や分化系統段階を判定することが可能であり、造血器腫瘍等の免疫学的マーカー診断として極めて重要な検査となっている。

CBCに異常が認められなくても、リンパ節腫脹や消化管症状・臓器症状・皮膚症状など、造血器腫瘍が疑われた場合は、リンパ節生検や造血器腫瘍の存在する組織を生検し、スタンプ標本・病理組織標本・細胞表面マーカー・染色体/遺伝子検査を行う。

また、リンパ腫ではステージングの目的で、白血病では全身浸潤の有無を診断する目的で、適宜、画像診断や頭部髄液検査・消化管検査などを行う。

診断分類は、形態・表面マーカー・核型・遺伝子検査を用いたWHO分類を用いるようになった。
WHO分類の中では、急性白血病は、形態学中心のFAB分類を基本に発展させた分類法(表2)で、非ホジキン悪性リンパ腫(NHL)は、REAL分類を基本に発展させた分類(表3)ととらえられる。
ここでは掲載しないが、骨髄増殖性疾患・骨髄異形成症候群・ホジキンリンパ腫・免疫不全関連リンパ増殖性疾患・組織球樹状細胞腫瘍・肥満細胞症、などもWHO分類されている。
これらにおける細胞表面マーカーは現在発展途上であるが、新しいモノクローナル抗体の開発や多重カラーの進歩で、解析の有用性が報告されつつある。

表2 急性白血病のWHO分類(FAB分類を基準に)

表3 リンパ系造血器腫瘍のWHO分類(REAL分類を基準に)