Cyclin A2-FITCと7AADによる2カラー細胞周期解析例

 

Cyclin A2-FITC(縦軸)と7-AAD(横軸)を用いて2カラー染色でセルサイクルを解析しました。
Cyclin A2-FITCは、Go期およびG1期では、発現量が少なく、S期で増大します。G2期で最大となり、M期で減少します。7-AADで核DNAを染色し、2カラー解析をすれば、明瞭にG2期とM期を判別することができます。


Cyclin A2-FITC(縦軸)と7-AAD(横軸)による2カラーセルサイクル解析



はじめに

細胞周期解析は免疫学や腫瘍学などの生物学的研究に おいて重要です。フローサイトメトリーは、細胞のDNA含量を測定し、細胞周期の各期(G0/G1、S、G2M)の割合を解析する技術です。Cell Lab Quanta™ SCは、このアプリケーションに最適な分析装置です。

Quanta SCでは細胞周期の詳細な解析を抗Cyclin A2抗体を用いて行うことができます。サイクリンはCyclin Dependent Kinase(CDKs)の活性化を介し、細胞周期を制御する中心的役割を担います。2 増殖している体細胞中では、2つのサイクリンのアイソフォームのうちの1つであるCyclin A2を発現しています。

G0期及び有糸分裂期(M期)ではCyclin A2の発現は無いか非常に低くなっています。G1期ではその発現レベルがわずかに高くなり、S期で増加し、最も高い発現はG2期で見られます。

Cyclin A2の発現を用いて、発現の無いまたは非常に低いM期と最も発現の高いG2期を判別することができます。

Cell Lab Quanta SCは、細胞体積(EV)と側方散乱光、3つの蛍光を同時に測定するフローサイトメトリーシステムです。

抗Cyclin A2 FITC標識抗体は488 nmレーザで励起され、蛍光波長は525 nm付近です。

細胞内DNA含量は、メタノールで膜透過処理後に7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD)で染色し、測定しています。7-AADは488 nmレーザで励起され蛍光波長は650~675 nm付近です。



材料

• 標準粒子10 μm 製品番号 6602796
• 抗Cyclin A2-FITC 製品番号 A22327
• FITC標識コントロール抗体 製品番号 A07795
• 7-AAD 製品番号 A07704


細胞培養と処理

K562細胞は、10%非働化FCS加RPMI1640で培養しました。1×106個/mLの細胞にthapsigargin(1 μM)またはpaclitaxel(1 μM)を添加し、18~20時間処理を行いました。 アポトーシス誘導剤のthapsigargin(TG)は、筋小胞体と小胞体のCa2+-ATPaseポンプの阻害剤です。3 paclitaxel(taxol)はアポトーシス誘導し、細胞内微小管、具体的には紡錘体と結合した微小管に結合することによりM期アレストを誘導します。4


Cyclin A2とDNAの2重染色

細胞の固定、膜透過処理、染色に関しては、抗Cyclin A2-FITC(製品番号 A22327)に添付されたデータシートを参照してください。FITC標識アイソタイプコントロールによる染色も行ってください。

  1. 固定と膜透過処理
  2.  • Quanta SC、Coulter Counter Z™シリーズまたはVi-Cellで細胞濃度を正確に測定します。
     • 1.5または2 mLのアッセイチューブに5×105個の細胞浮遊液を分注します。
     • 300g×5分 4℃で遠心し、上清を除去します。
     • 1 mL PBSで洗浄します。
     • 穏やかにボルテックスしながら、1 mL 冷メタノール(100%)をゆっくり加え、固定と膜透過処理と行います。
     • 氷中で10分間インキュベーションします。
     • 300g×10分室温で遠心し、上清を除去します。


  3. 染色
  4.  • 1 mL 0.5%BSA加PBSで1回洗浄します。
     • 上清を除去し、100 μL 0.5%BSA加PBSで再浮遊させます。
     • 20 μL 抗Cyclin A2-FITCまたはアイソタイプコントロールを添加します。
     • 20 μL 7-AADを添加します。
     • 穏やかに混和し、20~25℃暗所で60分インキュベーションします。
     • 1.5 mL 0.5%BSA加PBSで2回洗浄します。
     • Quanta SCで測定します。


    Quanta SC ソフトウエアの測定プロトコル設定

    Cell Lab Quanta SC は、細胞の大きさを測定できるので、細胞周期の各期における細胞の大きさの違いを解析することができます。Electric Volume(EV)は、標準粒子10 μm でキャリブレーションされ、細胞の大きさを測定します。大きさのスケールがキャリブレーションされた後は、EV gain の調整により細胞集団のEV のスケールが自動変更されます。デブリスはLower Level Discriminator(LLD)の調整で除外することができます。FITC(FL1)を測定するために、「Parameter Info」の中でFL1 に「Log」を選択してください。コントロールまたは処理サンプルがスケール内に入るようFL1 PMT voltage を調整します。FL1 の第1 ディケードにアイソタイプコントロールの細胞集団が表示するようにします。7-AAD(FL3)を測定するために、「Parameter Info」の中でFL3 にリニアを選択してください(「Parameter Info」の中でFL3 の「Log」が選択されていないことを確認してください)。

    PMT3 PMT voltage は、G0 /G1 期のピークが約200 チャンネルになるよう調整してください。FL1 とFL3 の2 パラメータヒストグラムに多角形リージョンまたは楕円形リージョンを描き、各細胞周期の%を表示してください。


    フィルタ構成

    標準の488 nm レーザ用フィルタ構成を使用します(図1)
    • 550DLP
    • z488RDC
    • 525/40 BP(FL1)
    • 600DLP
    • 670LP(FL3)


    図1.
    488 nmレーザ使用時のCell Lab Quanta SCのフィルタ配置




    図2.
    コントロール、thapsigagin(1 μM、18時間)、paclitaxel(0.5 μM、18時間)処理をしたK562細胞。
    抗Cyclin A2-FITCと7-AADにて染色。 Thapsigagin処理はG0期にアレストしており、 Paclitaxel処理はM期にアレストしている。



    参考文献

    1. 1. Enten J, Monson M. DNA cell cycle analysis with 4’,6-diamidino-2-phenylindole (DAPI) or propidium iodide (PI) nuclear stains. Cell Lab Technical Application Information Bulletins 2004; http://www.beckmancoulter.com/literature/Bioresearch/A-2012A.pdf
    2. Morgan DO. Principles of CDK regulation. Nature 1995; 374:131-134.
    3. Jackisch C, et al. Delayed micromolar elevation in intracellular calcium precedes induction of apoptosis in thapsigargin-treated breast cancer cells. Clin. Cancer Res. 2000; 6:2844-50.
    4. Rowinsky EK, Donehower RC. Paclitaxel (Taxol). N. Engl. J. Med. 1995; 332: 1004-1014.