DxFLEX コンパクトクリニカルフローサイトメーターとFlow-Countを用いた絶対数測定
従来、フローサイトメトリー(FCM)の使用目的は、細胞集団の中のあるポピュレーションの割合(陽性率)を調べることが中心でした。しかし今日、造血幹細胞、残存白血球、CD4陽性T細胞数の測定といったポピュレーションの割合と同時に、その細胞数(絶対数)の測定を必要とするアプリケーションが要求されてきています。
Flow-Count 標準粒子は、フローサイトメーターで絶対数測定をするための蛍光粒子浮遊液です。 各蛍光標準粒子は、488 nmで励起したときに525~700 nmの蛍光を発する色素が含まれています。サイズや蛍光強度が均一で、粒子濃度が検定されており絶対数の直接測定が可能です。
原理
Flow-Countは、内部標準法を用いて細胞絶対数を測定する試薬です。 Flow-Countは、FL1 ~ FL4(緑~深紅色)のすべての蛍光物質がついた約10 μmのラテックスビーズ懸濁液です。ビーズの濃度(個/μL)がLotごとに明記されています。Flow-Countをサンプル浮遊液に混和するだけで、ビーズの数と目的細胞数の比率から細胞の絶対数を求めることができます。
Flow-Countの特長
・FITCからPC5に至る幅広い蛍光スペクトルに対応しており、4カラー分析にも使用できます。
・ 蛍光強度が十分強いので、陽性細胞領域からFlow-Countを容易に区別しゲートアウトできます。
・ Flow-Countは、保存に伴う変性や凝集を防ぎ、測定に影響を与えないように工夫された溶媒に懸濁されており、サンプル溶液中に確実に分散されます。
・ 懸濁液なので試料中の細胞濃度にあわせて添加量を加減することができます。
・ ビーズ懸濁液を測定直前に添加するので、貪食や凝集によりビーズ数が変化する恐れがありません。
・ ロットごとのアッセイ値が、添付説明書に1 μL中の粒子数として記載されています。
・ DxFLEXでは、Statistics Settingの設定により絶対数の自動計算ができます。
サンプル調製方法
- サンプル100μLを試験管に分注します。
- 目的細胞を区別するために染色が必要な場合は、抗体等で染色します。
- 溶血が必要な場合は、溶血操作をします。 溶血操作が必要ない場合は、PBSで約1 mLに希釈します。
- 室温に戻したFlow-Countを、泡が立たないよう10秒間、よく攪拌します。 Flow-Countを100μLサンプルに添加します*1。(サンプル分注量と等量を添加します。)
- 測定直前に5秒間よく攪拌し、FCMで測定します*2
*1 : サンプルとFlow-Countを分注するピペットは同じものを用いてください。(ピッペットのキャリブレーション誤差を相殺できます)。Flow-Countビーズは沈殿しやすいので、転倒混和等を用いて、使用前によく攪拌してください。
*2:測定前にFCMチューブを必ずよく攪拌してください。DxFLEXで測定する場合は、アッセイ値を入力し、目的細胞の絶対数を自動計算させることができます。
絶対数計算方法
Flow-Countを用いた絶対数測定の計算方法は下記の通りです。
Flow-Count 使用時の注意点
- Flow-Countとサンプルを分取するときは、キャリブレーションされた再現性のあるピペットを使用してください。
- Flow-Countとサンプルを分取するときは、正確なピペッティングを行ってください。
- Flow-Countを攪拌する際は、気泡ができるような過剰な攪拌はしないでください。また気泡をピペットで吸わないよう気を付けてください。
- Flow-Countは、遮光し2 ~ 8℃で保存してください。開封後は、30日間安定です。凍結や乾燥をさせないよう注意してください。
- サンプルは、Flow-Count 添加後、2時間以内にFCMで測定してください。
- Flow-Countは、希釈せずに容器から直接分取してください。分取する前に、Flow-Countを室温(20 ~ 25℃)に戻し、Vortexミキサーで10秒間攪拌してください。
- Flow-Countを添加したサンプルは、測定前に5秒間Vortexミキサーで攪拌してください。
- Flow-Count使用時の温度、添加後の時間、攪拌時間を守ってください。
- Flow-CountはLotごとにビーズ濃度(アッセイ値)が記載されています。絶対数の計算には、各Lotのアッセイ値を使用してください。
- 信頼性のあるデータを得るために、Flow-Countは1,000イベント以上カウントしてください。
- Flow-Count が微生物等に汚染された場合、誤った結果になることがあるので、注意してください。
- サンプルを洗浄する場合、細胞のロスがあると正しい結果が得られない場合があります。絶対数測定ではNon-Wash法をお勧めします。しかしどうしても洗浄操作が必要な場合は、アスピレーション等は注意をして行ってください。
機器設定
- DxFLEXの電源を入れ、CytoExpert forDxFLEXを立ち上げます。
- スタートアップおよび精度管理を行います。
- Compensation Experimentで感度調整と自動蛍光補正を行います。
- Panel Experimentを作成します。
- 「New-Panel Experiment」を開き、「Experiment」に名前を付けて保存します。
- 「New Empty Sample」をクリックし、Sampleをリストに追加します。
- 追加したSampleにカーソルを合わせ右クリックし、「New Tube」を選択しチューブを追加します。
- 「Settings」から「Set Channel」を選択し、Flow-Count 検出用にECD channelとFS Hight、そのほか使用する検出器を選択します。また蛍光色素のラベル名を入力します。
- 画面に表示するプロット図を作成します。
- 「Compensation Matrix」を開き、「Import」から3)で作成したGainとCompensationを適応させます。
- 流速、Stop条件、表示細胞数を設定します。
- 「Run」をクリックし、サンプルを流しながらスレッショルドの調整を行います。
- 「Record」をクリックしてデータを取得します。
Flow-Count Beadsのゲート方法とDxFLEXでの自動計算方法
- FSC-HとECD-Aのプロット図を作成します。
- Beadsの集団を囲います。(Beadsリージョン)
- BeadsリージョンをTimeとECD(ECD Channel」で使用した試薬名)で展開します。ここでシングレットビーズを囲い(CALリージョン)ダブレットビーズを除きます。
- 「Statistics」アイコンをクリックし、統計テーブルを表示します。
- 統計テーブル上で右クリックし、「Statistics Setting」を開きます。
- Flow-Countから絶対数を計算する設定を行います。
- 「Statistics」タブを開き「Event/μ L(B)」にチェックを入れます。
- 「Beads Population」は「Select」ボタンからシングレットBeadsを囲ったゲート名を選択します。
- 「Beads Count」にはチューブに添加したFlow-Countの全Beads 量を入力します。例えば、Flow-Countのアッセイ値が1,014/μLで、添加量が100μLの場合、101,400と入力します。
- 「Sample Volume」にSampleの添加量を入力します。
※ Tubeにカウント用Beadsがすでに固相化されているTubeに入っているBeadsの数を「Beads Count」に、添加した検体量をSample Volumeに入力してください。
- OKをクリックします。
※ FSC-Hの選択は「Hight」から「FSC-H」と選択します。
※ 絶対数測定用Beadsを添加したサンプルを測定したデータは、データ取得後に上記の設定を行っても絶対数が反映されます。
測定結果例1:リンパ球サブセット
末梢血をIOTシリーズCD3-FITC、CD56-PE、CD19-PC7、CD4-APC、CD8-PB、CD45-KOで染色。VersaLyse溶血試薬で溶血後、測定前にFlow-Count BEADSを100μL添加(Flow-Countアッセイ値:1,014個/μL)。DxFLEX コンパクトクリニカルフローサイトメーターにて測定。
測定結果例2:CD34陽性造血幹細胞測定
末梢血をStem-KITを用いて染色・溶血後、Stem-COUNT Beadsを100μL添加し(Stem-COUNT Beadsアッセイ値:992個/μL)、DxFLEX コンパクトクリニカルフローサイトメーターにて測定。
参考文献
Robert Sutherland et al., : The ISHAGE Guidelines for CD34+ Cell Determination by Flow Cytometry :JOURNAL OF HEMATOTHERAPY 5 : 213-226(1996)