樹状細胞(Dendritic Cell; DC)は、最も強くT細胞を活性化する抗原提示細胞として知られており、がん免疫療法の鍵を握る細胞としても注目を集めています。樹状細胞およびその前駆細胞は末梢血中にも存在し、末梢血樹状細胞(PBDC)と総称されます。PBDCは、さらにCD11cもしくはCD33が陽性のMyeloid DC(MDC)と、CD123もしくはBDCA-2が陽性のPlasmacytoid DC(PDC,Lymphoid DCともいう)の2群に分けることができます。MDCとPDCはその由来や機能が異なるとされています。
末梢血中のPBDCの頻度は非常に低く、単核球の1%未満です。DCに特異的に発現するマーカーは非常に限られており、しかもその一部にしか発現していません。このため、従来のPBDCの測定には、DCに発現しないLineageマーカーとDCに発現する機能マーカーを組み合わせたマルチカラー分析が用いられてきました。しかし、この方法は一番重要な部分がネガティブセレクションであることや機能マーカーの発現レベルがDCの成熟に伴って大きく変動する等の問題点を抱えています。
ILT3(LIR-5, CD85k)は、ILT(Immunoglobulin-like Transcript)ファミリーの分子量60kdの膜貫通型分子で、NK細胞におけるKIRのような機能調節性のレセプタと考えられています。
ILT3は、末梢血ではCD14+ HLA-DR+の単球とCD14dim CD16+ HLA-DR+の炎症性単球サブセットおよびPBDCに発現し、T細胞、B細胞、NK細胞、好中球には発現しません。さらに、単球からGM-CSFとIL-4で誘導した樹状細胞もILT3陽性です。したがって、ILT3をゲーティングマーカーとして用いることで、PBDCサブセットをポジティブセレクションで同定できます。
図1は、CD(14+16)-FITC/ILT3-PE/CD33-PC5の3カラー分析で健常者末梢血中のMyeloid DCを測定した例です(CD14-FITC+CD16-FITC/CD33-PE/ILT3-PC5の組み合わせでも同じ要領で測定することができます)。また、CD33の代わりにCD123を組み合わせることで、同じ測定プロトコルでPlasmacytoid DCの測定が可能です(図2)。
いずれも、階層化ゲーティングによる絞込みに加えて、好酸球をアンカーとしてDCゲートを設定するため、希少なPBDCサブセットを確実に検出、同定できます。
さらに、4カラーや5カラー分析の可能なフローサイトメータでは、CD2やCD45等を追加して更に詳細かつ高精度にPBDCサブセットを解析する、あるいはFlow-Count標準粒子を用いてPBDCの絶対数(血液1μLあたりの細胞数)を直接測定することなども可能です。
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① (FS/SS) ② CD33/SS ③ CD14+CD16/ILT3 ④ CD33/ILT3 |
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① (FS/SS) ② CD123/SS ③ CD14+CD16/ILT3 ④ CD123/ILT3 |