PNH型血球の好感度測定法

Ⅲ. おわりに

classical PNHでは、赤血球の解析において少なくとも数%のPNH型血球を認めることができ、CD71陽性細胞や低比重の大型未熟赤血球分画でその割合は高まる。また、顆粒球を対象に解析を行えば、さらに検出は容易となる。
しかし、PNH-subclinicalの診断を目的とするPNH型赤血球の高感度測定は、極めて難しい。本測定の特徴は、「CD55,59陰性の欠損細胞を認めたときに、陽性所見となる」点であり、さらにその感度を小数点以下第3位まで保証しなくてはならない為である。厳密な意味では陰性対照が存在せず、さらに偽陽性化する要因が多い。特に貧血症例において小型や奇形赤血球が出現している症例では、偽陽性が頻発する。このことから顆粒球を対象に解析を行うことは有用であるが、現時点では「赤血球表面抗原検査(旧 フローサイトメトリーのTwo-color分析法による赤血球検査)」として保険点数の請求はできない。各施設においては、赤血球と顆粒球の2系統を測定し、赤血球分を保険請求しているのが現状と考えられる。2系統の解析により信頼性は高まるが、改訂により報酬はさらに下がりとても見合ったものではない。今回、必要最低限の抗体のみ使用したが、抗体コストだけで保険点数を超える。解析技術もさることながら、これらの問題点の解決が強く望まれる。
なお、本稿は下記の抜粋であり、参考にして頂きたい。

林田雅彦, 前川ふみよ:

赤血球・血小板表面抗原染色 -発作性夜間血色素尿症と特発性血小板減少性紫斑病を中心に-:

CYTOMETRY RESEARCH 13(1): 11-18 2003

林田雅彦, 北田佳代, 津田勝代, 岸森千幸, 山本智恵美, 岩谷良則:

フローサイトメーターによる赤血球の高感度PNH型血球解析の問題点:

CYTOMETRY RESEARCH 20(1): 65-74 2010

公財)天理よろづ相談所医学研究所 林田雅彦先生

散乱光サイトグラム

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