PNH型血球の好感度測定法

Ⅱ. 高感度PNH型細胞の検索方法 1~2

1.測定試薬

<抗体>

  • マウスIgG1FITC標識抗体 : A07795; Beckman Culter 20μl/テスト
  • CD55FITC標識抗体 : JS11KSC2.3 (IgG1) ; IM2725; Beckman Culter 20μlテスト
  • CD59FITC標識抗体 : P282E (IgG2a) ; IM3457U; Beckman Culter 20μlテスト
  • CD235aPE標識抗体 : JC159(IgG1) ; DAKO 2μlテスト

<その他>

  • PBS(ダルベッコPBS -、NaN3不含)
  • Alb-PBS(0.1%牛アルブミン添加ダルベッコPBS、 NaN3添加)
  • 6%デキストラン生食
  • 溶血液(0.83% NH4Cl、0.08mM EDTA-4Na、10mM KHCO3

2.赤血球の解析

検体は、血算に適したEDTA加血が利用される。また、血小板の影響や血球濃度を一定にするために一度遠心洗浄した赤血球ペレットの使用がよいが、簡便性から未洗浄の全血を用いて血球浮遊液を作製してもよい。

2-1.染色方法(赤血球)

  1. 1%血球浮遊液の作成
    Alb-PBS 1ml にEDTA血10μlに加えて1%浮遊液とする
  2. CD55,59カクテル免疫染色
    試験管に抗体と赤血球浮遊液を100μl添加 (4℃・30分反応)
    ・陰性対照: マウスIgG1 FITC標識抗体 20μl
    ・sample : CD55,CD59FITC標識抗体 各20μl
  3. 洗浄
    Alb-PBS 3mlを添加して300G・5分遠心、上清を除去
  4. CD235a赤血球免疫染色
    sample(沈渣)のみにCD235a-PE標識抗体を2μl添加 (4℃・30分反応)
  5. 再浮遊&解析
    陰性対照およびsampleにAlb-PBS を1ml加え,FCMにて CD235aの明らかな陽性細胞を解析する。
  • CD235a染色について:陰性対照もCD235a染色しても構わない。しかし、CD235a染色した陰性対照の測定後にsampleを測定すると、陰性領域にキャリーオーバーによる細胞が出現することがある。洗浄機能の優れたFCM機器の使用や測定前の洗浄を十分行うなど、キャリーオーバーに十分注意を払う必要がある。
    また、CD235aの染色後に遠心洗浄を行うと、赤血球が遠心操作により凝集を起こす。遠心洗浄を行わなくても良いように、CD235a抗体は少ない抗体で十分な蛍光強度が得られる高アフィニティーの抗体を選択する。

2-2.解析方法(赤血球)

  1. 使用パラメーターは、前方散乱光(FS)、側方散乱光(SS)、Log-FL1、Log-FL2の4つを用いる。
  2. パラメーターの感度は、FS、SSでは赤血球全体が表示できるようにセットし、LFL1、LFL2の感度は陰性対照の赤血球がfirst decadeに入るようにセットする(LFL1は少し高目でも良い)。
  3. ディスクリミネーターは、FSにて適度に掛ける。
  4. ゲートは、散乱光サイトグラムにおいて赤血球全体を大まかに選択する。
  5. LFL1のcut lineは、陰性対照を流し、陽性率0.1%付近でセットする。
  6. PNH型赤血球の検出は、LFL1とLFL2の2パラメーターヒストグラムにおいて、CD235a強発現細胞集団にウインドウをセットする。小数点以下第3位までの感度が必要な場合は、20万個以上の細胞をカウントする。

解析法

2-3.解釈と注意点

  1. 陰性対照について
    PNH型血球検索のための厳密な陰性対照は、存在しない。本来、陰性対照は陽性細胞を検出するためのモノであり、PNH型血球のように陰性細胞を検出する場合には、洗浄不足のないように適切に染色するとネガティブ・カットラインが低くなり、PNH型血球は少なくなる。逆に、洗浄不足や非特異反応が多いとネガティブ・カットラインが高くなり、偽陽性の原因となる。欠損細胞(PNH型血球)の特異性を高めるには、ネガティブ・カットラインが低くなるように測定系をきっちりする必要があるが、PNHタイプⅡ血球の様な抗原減弱細胞の検出が困難となる。このため陰性・陽性の判断は、陰性対照にて適切に行い、割合についてはヒストグラムパターンでの報告を、減弱細胞についてはヒストグラムパターンから症例毎に適宜算出する必要がある。
  2. FSを用いた赤血球サイズ3分画の解析について
    赤血球サイズによる3分画の解析において、PNHは大型細胞分画でPNH型血球の割合が高く、サイズの低下と共にその割合が低下する傾向がある。

赤血球における PNH型血球の解析方法(CD55,59染色)
赤血球における PNH型血球の解析方法(CD55,59染色)

しかし、AAやRA、その他の貧血症例においては、小型領域ほど割合が高値となる逆転現象を認める。それらの細胞分布は、GPIアンカー型膜抗原を有する正常細胞領域から蛍光強度の低い減弱細胞が連続的に逸脱する像を示す。この現象は、貧血例に多く赤血球の小型化による細胞膜量の極端な低下や、寿命を超えた老化赤血球(奇形な赤血球)におけるGPIアンカー型膜抗原の発現低下が原因と考えられる。このような場合には、大型赤血球領域(FSを指標に上部半分の大型血球)を解析するか、顆粒球の結果を参考にして判断する。

乖離症例における赤血球サイズによるCD55,59の染色性(A A)
乖離症例における赤血球サイズによるCD55,59の染色性(A A)

乖離症例における赤血球サイズによるCD55.59の染色性(MDS)
乖離症例における赤血球サイズによるCD55.59の染色性(MDS)

なお、貧血を示さない小型赤血球についてCD55,59の発現を調べるため、異型骨髄移植時の骨髄血をセルセパレーターにて赤血球除去したサンプルを用いて解析した。本サンプルは単核球細胞を選択的に採取する際に比重の小さな小型赤血球を多数含んでいる。本サンプルでの赤血球におけるCD55,59の染色像は、先に示したAAやRAのCD55,59減弱細胞よりも軽度であったことから、赤血球サイズ以外の因子がさらに大きく関与していることが示唆された。

異型骨髄移植における赤血球除去検体を用いたCD55,59染色像
異型骨髄移植における赤血球除去検体を用いたCD55,59染色像