免疫学のためのフローサイトメーター

3. 蛍光感度とログスケール

陰性ピークと弱陽性ピークとの間のキレの良さは、データ(陽性率などの統計値)に大きな影響を与えます。 現在のフローサイトメーターの最高蛍光感度は、FITC蛍光で100MESF、PE蛍光で50MESF程度です。各社ともその他の蛍光感度に関しては、公表せず不明です。一般的に、濃赤色から赤外領域では、検出器PMTの感度が低下します。また、光ファイバーは、UVから紫色領域で、光の吸収があります。

図5.蛍光ビーズと検量線

各種蛍光色素の強度の違いも注意しなければなりません。一般に、標識蛍光色素の違いによる抗体の蛍光強度は、下記の順に強くなるとされています (同一の抗体で、標識蛍光色素のみを変えて比較)。(注:APCのみ赤色レーザー励起のため、そのレーザー出力に依存)

PerCP ≦ FITC < ECD ≦ APC < PC7 ≦ PC5 < PE

陰性ピークと弱陽性ピークのキレの良さは、フローサイトメーターの蛍光感度と、使用する蛍光色素に依存します。

もうひとつ大事なポイントがあります。免疫アプリケーションでは、蛍光パラメータはログスケール(対数目盛)を使用します。

図6.フローサイトメーター(アナログ方式)のデータ例

図6.フローサイトメーター(アナログ方式)のデータ例<

通常は、4桁の対数、1:10,000を用います。近年、デジタルフローサイトメーターが普及し、ログスケールの直線性、定量性は、改善されました(図7.右参照)。しかし、機種によっては、A/Dコンバーターの分解能不足で陰性ピークを正確に描けない、不正確なヒストグラムを出力する場合があります(図7. 参照)。そのような機種は、スムージング処理や推量補間などのデジタル処理で取り繕います。一方で、5桁 1:100,000の広い測定範囲(ダイナミックレンジ)を有する最新機種も登場しました(図10. 参照)。

図7. 14ビットデジタルフローサイトメーターのデータ例(ピークシグナル)
対数一桁目の量子化誤差が大きい

図8.14ビットデジタルフローサイトメーターのデータ例(ピークシグナル)
対数二桁目に陰性ピークを移動し、強陽性ピークがスケールアウト

図9.20ビットデジタルフローサイトメーターのデータ例
量子化誤差が皆無

図9.20ビットデジタルフローサイトメーターのデータ例

図10.23ビットデジタルフローサイトメーターのデータ例
5桁の対数目盛

図10.23ビットデジタルフローサイトメーターのデータ例

まとめ

3つのポイントは、互いに関連します。

  • マルチカラー測定と蛍光補正

  • 測定精度と検出感度

  • 蛍光感度とログスケール

免疫学の研究者の方々が、一番見過ごされているポイントは、マルチカラー測定と測定精度の関係だと思います。多重染色によるマルチカラー測定データの有用性は、その測定精度にかかっています。特に、存在比率の少ないポピュレーションは、測定精度を向上させるだけで、新たな知見が得られるかもしれません。できるだけ多くの細胞数を測定し、常に測定精度の高いデータを用いて考察することが、大切なことでしょう。

最後に

3つのポイントを正しく理解してFCM(FACS)による測定を行った後題は、マルチパラメーター解析です。すなわち、3カラー以上のマルチカラーデータの解析は複雑になりの難ます。多数のゲートを用いて、多数のヒトグラムを作る必要があります。
最近、その課題に注目したユニークな解析ソフトウェアが開発されました。1つのヒトグラムで3カラー以上の組み合せの陽性率を解析するヒトグラム(Treeプロット)や、動的なゲートを用いてスキャン解析が行えます。

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