2. 測定精度と検出感度

5カラーや9カラーなどの多重染色を用いたマルチカラー解析を行うと、しばしば存在比率の少ない細胞集団(サブセット)が重要な鍵を握ることがあります。しかし、測定精度が悪いと、データ(陽性率などの統計値)がばらつくため、有意差を発見できないことがあります。(ばらつきは、正規分布になります。平均値±標準偏差の間に全データの約68%が、平均値±2標準偏差の間には全データの約95%が含まれます。)
測定精度は、標準偏差または変動係数で表し、変動係数は標準偏差÷平均値×100で求められます。

 

測定精度を向上させるために、測定細胞数を多く取得する必要が生じます。存在比率(陽性率)と測定精度と測定細胞数の関係は理論的に求めることができます(表2.参照)。

表2.存在比率(陽性率)と測定精度と測定細胞数

例えば、存在比率(陽性率)が1%の細胞集団(サブセット)を測定精度5%(つまり1±0.05%)で測定したいのならば、目的細胞(例えば、リンパ球)を40,000個測定する必要があります。存在比率が0.1%の細胞集団を測定精度3%(0.1±0.003%)で測定したいのならば、目的細胞を1,111,111個測定する必要があります。
100万個の細胞を測定する場合、フローサイトメーターが70,000個/秒の高速型ならば、20秒足らずで測定が完了します。

希少細胞の検出感度は、最大測定細胞数に依存し、細胞を1億個まで測定できる機種ならば、含有率が0.0001%の希少細胞を±0.00001%の精度で検出できます。

図4.低陽性率集団の測定例 : CMV特異的MHCマルチマー(7カラー解析)
縦軸:CMV特異的マルチマーB7pp65-PE  横軸:CD8-APC-Alexa Fluor750
陽性率0.059%   高速FCM CyAn ADP使用

  • 総測定細胞数10万個
    (測定時間 2秒)
    抗原特異的T細胞 18個
  • 100万個
    (15秒)
    162個
  • 500万個
    (75秒)
    785個
  • 1,000万個
    (150秒)
    1725個

 

iPS細胞を用いた研究の場合も、わずかに含まれる未分化な細胞の含有率(%)を高精度で測定することが重要になります。