FCMの原理入門講座

Ⅸ.ソーティング系(液滴方式)

3. ソート論理回路と同時通過アボート

装置は、高速でかつ高純度な分取を行う際に、目的以外の細胞やデブリを分取しないように厳密に判別処理をする必要があります。例えば、同時に2個の細胞がレーザー光照射部を通過すれば、通常、装置は1個の細胞として認識し、その結果として分取の純度は低下します。また、気圧変動によるコンプレッサの圧力変動、水温変動による粘度変化、細胞の位置による流速の変化などにより、流速が微妙に変動し、装置に入力されたディレイタイムと実際の細胞のブレークオフポイント到着時間がわずかに異なることがあります。その結果、荷電した目的の液滴ではなく、その前後の液滴に目的の細胞が含まれてしまいます。これらの分取の際の問題を解決するために、最近の機種には、複雑なソートモードを駆使できるソート論理回路や、同時通過細胞を検出してアボートする回路を搭載しています。

 

ソート論理回路(ソートモード)

ソート論理回路は分取する目的の液滴とその前後1液滴(合わせて3液滴)をそれぞれを分割し(4~100分割)、分割されたフラクションの中のどこに目的の細胞と目的以外の細胞やデブリが入っているのかを判断します。例えば、2ドロップソートの場合、目的細胞を含む液滴と、前後の液滴の中で、目的細胞に近い液滴にも荷電をかけて分取を行います。2液滴のいずれかに目的外の細胞やデブリが含まれている時は、分取を行わないか、行うかを選択できます。また、1ドロップソートでも、目的細胞の液滴内の位置と、前後の液滴の目的外の細胞の位置に応じて、荷電をします。
ソート論理回路を用いることで、高純度と高回収率の両立を目指します。

目的の細胞を含む液滴
● 目的外の細胞を含む液滴
○ 空の液滴

1.5ドロップソート

1.5ドロップソート 説明図

1ドロップソートの純度優先モード

1ドロップソートの純度優先モード 説明図

ソートモード 機能
Purity 純度を優先するモード
Enrich 回収率を優先するモード
single 純度を最も優先するモード

これらのソートモードを使用することで、簡単確実に目的の細胞を高い純度、高い回収率、正確なカウント、そして分取速度を満足する状態で分取することができます。
さらには、左右異なる優先順位で分取できます。例えば、左側の試験管には純度を優先し分取し、右側の試験管には回収率を優先し分取することが可能なセルソーターもあります。6方向ソーティングが可能なセルソーターの場合、目的集団を純度を最も優先するモードと、それによってアボートされた目的集団を回収することが可能となり、左右6ヶ所に分取でき、貴重な目的細胞をすべて回収することができます。

同時通過アボート

PPU回路説明図

2つの細胞が同時にレーザー光を通過すると、セルソーターはそれを1個の細胞として処理してしまいます。これは、純度を低下させます。レーザー光を同時に通過した細胞のパルス波形が、通常の細胞のパルス波形と違うことを利用して、これを防止するのが、同時通過アボートです。各パルス幅を分析し、同時通過した細胞を含む液滴には、荷電をしないように指示をします。
複数個凝集した細胞や、非常に接近してレーザー光を通過した細胞は、通常よりも長い時間をレーザービーム中を通過するのに必要とするので、この通過時間を常時チェックします。この機能を使用することで、高純度の分取を実現します。しかし、収率(または回収率)は、低下します。収率を低下させないで、高純度を実現するのには、流速を速くして、パルスの幅を狭くすることが重要です。(4.高速ソーティングを参照