FCMの原理入門講座

Ⅷ.データ処理系

4. ソフトウエア

Kaluzaソフトウェア

フローサイトメトリーでは、多量の細胞数のマルチパラメータのデータを用いて、目的のアプリケーションに応じた解析を行うことが大切です。複数のヒストグラムやゲートを駆使し、わかりやすいデータを作成します。
測定アプリケーションに応じた各種の解析プロトコールを作成し、記憶させることができます。また、これらのいくつかは、専用パッケージとして市販されています。
標準装備のソフトウエアでは対応できないアプリケーションについては、専用ソフトウエアが供給されています。例えば、細胞周期解析のマルチサイクルソフトウエアマルチカラー解析ソフトウエアKaluzaなどが相当します。
現在のフローサイトメトリーのソフトウエアは、このようなデータ処理のみだけではなく、装置全体のハードウエアの自動制御を行います。複数のセンサを内蔵し、感度の自動調整や、ゲートリージョンの自動設定、フローセルの詰まりの検出とその自動洗浄、オートサンプラ制御などマルチタスクで自動処理を行います。

標準ソフトウエア

一般的な標準ソフトウエアでは、マルチパラメータ解析に対応するために、複数のヒストグラムを作成し、複数のゲーティングを駆使して、解析します。免疫解析の場合、目的の細胞集団にゲートリージョンを設定し、そのヒストグラムから、陽性率を求めます。測定中のリアルタイム解析や、測定後のリストモードデータによる再解析も可能です。これらの測定データは、ハードディスクやDVDディスクに記憶され、バッチ処理による解析、印字も可能です。
また、時間パラメータを2パラメータヒストグラムの横軸にとって解析すれば、経時変化を解析できます。

マルチカラープレシーデンス解析例

パラメータの組み合わせで、ヒストグラムとリージョンを作成できます。カラープレシーデンス機能は、各リージョンに任意の色設定が可能です。カラープレシーデンスを用いて上位の優先順位にすると、希少なサブポピュレーションもはっきりと見えます。

カラーブレンド解析例

3つまでのゲートの組み合わせ(8つの色)をそれぞれの色で表示します。

Kilmogrov Simrnov解析例

コントロールとの違いが始まる点を、サンプルのヒストグラムとの比較から算出します。

Overtonサブトラクション

Roy Overtonのアルゴリズムを用い、コントロールとの違いが始まる点をサンプルのヒストグラムとの比較から算出します。

オーバーレイ解析例

コントロールとの各ヒストグラムの重ね書き、点線設定、ヒストグラムのアングル表示などが行えます。各ヒストグラムともスムージングをかけることができます。

FlowPageによるレポート例

施設のロゴマークなどを入れたテンプレートで、測定結果をプリントアウトすることができます。

細胞周期解析ソフトウエア

細胞周期(セルサイクル)

一般的に2倍体(diploid)細胞をフローサイトメトリーで分析すると、「幅の狭い」蛍光強度の分布が得られます。X軸に蛍光強度、Y軸に細胞数をとったヒストグラムで解析することができます。G1細胞はすべて同じDNA量を持つので、理論上はG1細胞それぞれから同じ蛍光強度が検出され 、ヒストグラム中ではただ1つのチャンネルに集まることになります。すなわち、ヒストグラム中ではG1の蛍光強度のところに非常に鋭いピークが現れるはずです。
これは、フローサイトメーターが完全であり、かつDNA特異的色素の結合が完全に一様である場合に得られる結果です。しかし、実際は、DNA色素の結合に生物学的要因による変動がみられる上、サイトメーターの装置に起因する様々なアーティファクトが存在します。したがって、通常、G1細胞から測定された蛍光は正規分布(ガウス分布)したピークとなります。これは釣り鐘型の分布をしており、この種の測定でみられる特徴です。
実測において、変動が大きいと、正規分布のピークの幅も広くなります。ピークの幅は、変動係数 Coefficient of Variation (CV) という用語で示されます。CVは正規化された標準偏差で、次の式で定義されます。:

CV(%)= 100×(ピークの標準偏差)/(ピークの平均値)

グラフ

グラフ

同様に、正常なG1細胞の2倍のDNA量を含むとされるG2および有糸分裂中の細胞は、DNAヒストグラム上では、平均蛍光強度がG1ピークの約2倍(DNA Indexが2.0)の位置に正規分布ピークを形成します。
実際はG2/G1 比は2.0より小さいことが多く、それはG1細胞よりG2細胞の方がDNA-タンパク(クロマチン)のパッキングが密または圧縮されているためです。そのため、DNA結合色素は、DNA結合部位への結合が若干妨害されます。一般的にはG2/G1 比は約1.97となります。
細胞のDNA合成を開始したばかりのS期細胞のDNA量は、G1期のそれよりほんのわずかに多いだけです。このDNA量は、細胞のDNA量がG2期レベルになるまで増え続けます。理論的に完全なフローサイトメーターが存在するとすれば、ヒストグラムにおいてS期細胞は、G1細胞のすぐ右側の位置から始まり、全G2期細胞の集まる位置のすぐ左側までの各チャンネルに存在することになります。(A参照)
しかしG1、G2ピーク幅が広がるのと同じ理由で、S期の分布も幅ができ、ヒストグラムはそれほど単純にはなりません。このため、初期のS期の細胞はG1期の細胞とオーバーラップし、S期後期はG2期の細胞とオーバーラップします。正確なG1、S、G2/M期細胞の比率を求めるために、このオーバーラップを考慮した細胞周期解析プログラムを用います。これらのデータは、記憶され、バッチ処理による印字も可能です。

フローサイトメーターから得られるヒストグラム(A)と、実際のすべての解析でみられる正規分布したヒストグラム(B)の違い

測定に全くエラーがなく"完全な"フローサイトメーターから得られるヒストグラム(A)と、実際のすべての解析でみられる正規分布したヒストグラム(B)の違い。Bでは、実際のデータポイントは小さな菱形で表示、実線は、Dean and Jett polynomial S phase modelにフィットさせ、正規分布G1およびG2期成分とS期を示している。破線はデータにこのモデルを全体的にフィットさせたものを示している。

自動制御ソフトウエア

フローサイトメーターの各部のセンサからの信号を基に、フローサイトメーターを自動で制御します。古くは、レーザーの出力制御やシース液/廃液レベルセンサがありましたが、現在は、フロー系の詰まりの検知とその自動洗浄や、自動感度調整、全自動スタートアップなど、よりユーザーを助けるための機能が多く内蔵されています。

5.レポート作成

測定したデータは、報告書に沿った形式で、ヒストグラムや統計計算結果がレイアウトされ、印字します。さらに、カット&ペーストなどのOSの機能を利用して、自由に変更することも可能です。バッチ処理を利用して、多検体の自動処理を行わせるのが一般的です。PDFファイルで保存できます。