FCMの原理入門講座

Ⅶ.パルス処理系

5.蛍光補正

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蛍光色素は、長分布(スペクトル)を持つため、光学フィルタで波長域別に分離しても、各検出器には目的以外の蛍光色素からの蛍光が漏れ込むことがあります。

グラフ

グラフ

サンプルを多重染色し、複数の蛍光のマルチカラー測定を行う際には、この漏れ込みがデータに影響します。漏れ込んだ分を差し引いて、目的の蛍光色素からの光(データ)になるよう専用の回路で、パルスに電気的 または数学的な補正を加えることを蛍光補正(コンペンセーション)と呼びます。
多重蛍光染色のサンプル測定では、単染色サンプルを用いて、理論的に次のような組み合わせの蛍光補正が必要です(デュアルレーザーやトリプルレーザーを用いて、6カラー以上の測定に対応します)。

2カラー(2重染色)

FL1⇔FL2 2通り

3カラー(3重染色)

FL1⇔FL2、FL1⇔FL3、FL2⇔FL3 6通り

4カラー(4重染色)

FL1⇔FL2、FL1⇔FL3、FL1⇔FL4、FL2⇔FL3、FL2⇔FL4、FL3⇔FL4 12通り

5カラー(5重染色)

20通り

6カラー(6重染色)

30通り

7カラー(7重染色)

42通り

8カラー(8重染色)

56通り

9カラー(9重染色)

72通り

蛍光補正 従来処理

Kaluzaソフトウェアによる蛍光補正の操作例(右上のヒストグラム)

フローサイトメーターでは、通常、測定時に上記のような蛍光補正を目視で行った上で、データを取得します。従来は各蛍光の電圧パルスをそのまま電気回路上で処理するアナログ回路方式でしたが、デジタルフローサイトメーターの登場によりデジタル演算処理によるすべての組み合せの蛍光補正が可能になり、正確な蛍光補正が可能になりました 。さらに、高精度自動蛍光補正法ADCが登場し、3カラー以上の測定でも、高精度で客観的に測定できるようになりました。

6.デジタルシグナル処理

従来は、電圧パルスを、蛍光補正回路やログ変換回路を通過した後、1024チャンネル(10ビット)の分解能でA/D変換(10ビット)してきましたが、デジタルフローサイトメーターは、電圧パルスをダイレクトに1万6000チャンネル(14ビット)以上の高分解能でA/D変換します。
DSP(Digital Signal Processor)を用いることにより、アナログ回路による蛍光補正やログ変換をすることなしに、測定データは、コンピュータ上での処理が可能なパラメータになります(デジタルログ変換)。
これにより、直線性の高い定量データを取得できます。ビーズによる可溶成分の定量解析では、重要なポイントです。さらに、100万チャンネル(20ビット)以上のデータを用いる機種は、後述する高精度自動蛍光補正ADCを実現できます。

デジタル波形処理 概念図

7.ADC(Advanced Digital Compensation)高精度自動蛍光補正

DSPなどのデジタルシグナル処理を用いることにより、従来のサイトグラム上の強蛍光細胞群のプロット位置を見ながら、蛍光補正の電気的な割合を求める方法から、各蛍光色素の波長分布解析をして、 逆行列法によるリアルタイムで演算処理して正確に蛍光の漏れ込み量を算出し、差し引く方法が可能になりました。

5×5ADCの原理概略

使用する各蛍光色素の蛍光波長分布を読み込み、測定した情報が、それらの蛍光色素の蛍光波長の和として、各成分の割合を求めます。通称、フィンガープリンティング法と呼ばれる手法で、客観的で高精度な蛍光補正を実現します。この方法は、リニア50万チャンネル以上のデータが必要です。
この方法は、測定後に、正確な蛍光補正をおこなうことも可能です。

8.アナログ方式とデジタル方式

前述したADC高精度蛍光補正と、高精度なログ変換データは、DSPなどを用いるデジタル方式フローサイトメーターの特長です。分解能の高いアナログデジタルコンバーターを用いたデジタル方式フローサイトメーターは、DSPなどを用いて高精度なデータを算出することができます。
デジタル方式は、検出器からのシグナルパルスをプリアンプに入れ、その後、すぐに高速&高分解能型A/Dコンバーターに入れて、デジタル化します。そのA/D変換の際に、すべてのデジタル機器は量子化誤差が問題になります。つまり、分解能が悪い(ビット数が少ない)とデータが歪み、最終データが不正確になります。そのため、パルスの高さを、高分解能(高いビット数)で数値化する必要があります。文献によれば、最低でも18ビット以上(260,000チャンネル以上)の分解能がデジタル方式のフローサイトメーターにはA/Dコンバーターに必要とされております。

アナログ方式とデジタル方式