FCMの原理入門講座

Ⅶ.パルス処理系

グラフ1

通常のシステムには5個から49個の検出器がついており、細胞がレーザーを横切る度に散乱光や蛍光が生じ、各検出器から電圧パルスが発生します。この電圧パルスは検出器が受け取った光の強度に比例します。電圧パルスは、ピークパルス、面積パルス、パルス幅に分類されます。

1.ピークパルスと面積パルス

検出された電圧パルスを処理し定量する方法は、パルスの高さ、幅、面積の3種類の方法があります。これは、クロマトグラムにおけるピークの定量法と似ています。

  1. パルスの高さ(PeakまたはHeight)は、細胞がレーザー光を通過する間で、最も強く光を発した際の瞬間的な明るさに相当します。初期のフローサイトメーターは、この方法でしかパルスを処理できませんでした。
  2. パルスの幅(Time of FlightまたはWidth)は、細胞がレーザー光を通過するのにかかった時間に相当するので、細胞の大きさ(長さ)を反映します。
  3. パルスの面積(IntegralまたはArea)は、細胞がレーザー光を通過する間に発した光の合計量に相当します。

通常は、感度の向上や直線性の良さから、パルスの面積を主として使用します。
右図は細胞がレーザー光を通過する際にピークパルスが形成される様子を示したものです。ピークパルスの高さは粒子がレーザーの中心を通ったときの最も強い光を示します。

アナログ方式の場合、ピークパルスを積分回路に通すと、面積パルスに変換されます。この積分パルスの高さは、細胞がレーザーの中を通過したときの総蛍光量を示します。
総蛍光量に比例するパルスの高さは、細胞がレーザー光を通過し終ったときに得られます。

右図は蛍光量が同じで異なった蛍光分布をもつ2種類の細胞のパルス例で、強度の違いから異なったピークパルスを生じています。ピークパルスの幅は蛍光分布を示します。ピークパルスの面積は、細胞がレーザーに入ってから出て行くまでに発したすべての蛍光量(総蛍光量)を示します。
細胞の蛍光量が同じなら、その分布が異なっても、面積パルスは同じです。例えば、キャッピングを起した細胞のピークパルスは、不正確になりますが、面積パルスは、その影響を受けず、正確に全蛍光量を測定します。

デジタル方式の場合、信号は1秒間に100万回から1億回サンプリングされます。その数値データを用いて、ピーク値、面積値、幅の値を算出します。

マニアのための豆知識

通常のフローサイトメーターは、パルス処理回路の処理スピードが遅いために、DeadTimeを有します。すなわち、ケースAのような状態で流れている場合は、測定の数え落しが生じませんが、ケースBのようサンプル濃度が高い場合は、直後の細胞が発するパルスをDeadTimeのため、見落します。高速型フローサイトメーターは、DeadTimeが非常に小さいので、ケースBでも数え落しをしません。しかし、ケースCのような同時通過した場合は、不正確になります。

通常のパルス

接近したパルス

重なったパルス