Ⅵ.光学検出系(6) 分解能と感度

Ⅵ.光学検出系

6.分解能と感度

分解能 CV値

分析機器にとって、微妙な違いを識別できる能力は重要です。これを測定分解能と呼びます。細胞から発生する散乱光や蛍光の強さは、光源(レーザー光)の強さに依存します。そのため、1つ1つの細胞に照射されるレーザー光の強さが不均一では、結果(データ)もばらついてしまいます。このデータのばらつきは、わずかに異なった別の細胞とのグラフ上の距離を縮めることになり、2つは別々のものとして識別できなくなってしまいます。これが分解能の低下です。
フローサイトメーターの光源であるレーザーの光は、中心が最も明るく、周辺は光が弱いという特徴をもっています。したがって、細胞が常にレーザー光の中心を流れていれば、すべての細胞が均一で最も強い光を受けることができます。
しかし、サンプル液側とシース液側の圧力の差が小さくなると、サンプル流の幅が広がってしまい、細胞は必ずしもレーザー光の中心を流れなくなります。その結果、細胞に照射されるレーザー光の強さが不均一になり、データがばらつき、分解能が低下してしまいます。
したがって、高い分解能でデータを得るためには次の条件が必須です。

  1. 光源の出力(明るさ)が安定していること。
  2. 細胞がレーザー光の同じ位置(同じ明るさのポイント)を同じ速度で通過すること。

そのためには、

  1. 光源(レーザー)の出力(明るさ)が安定していること。
  2. シース液とサンプル液の圧力差のバランスが上手く調整されていて、サンプル流の径が細いこと。
  3. 流れの中に気泡や汚れのような障害物がなく、層流になっていること。

分解能は、CV値(Coefficient of Variation)変動係数と呼ばれる統計値で表されます。非常に均一なビーズなどを測定し、そのCV値が小さいと、優れた分解能を有していると言えます。

 

感度 蛍光分子数/細胞

迷光を十分に遮断することが、検出感度向上のポイントになります。一般に、"Jet in Air"方式(空気中でシース流にレーザーを照射する方式)で検出する方が、"Sense in Quartz"方式(クオーツフローセル内のシース流にレーザーを照射する方式)より感度が劣ると言われています。さらに、Jet in Air方式では、分取の際に、液面の振動によるレーザー反射光が、側方散乱光の検出に大きく影響します。
また、後述するピークパルスよりも積分パルスの方が感度は優れています。
シース圧も感度に影響を与えます。シース圧が低い方が、すなわち、サンプルがゆっくり流れる方が、感度は向上します。

デジタル方式フローサイトメーター 分解能・感度の比較データ

マニアのための豆知識

感度は、蛍光の場合、蛍光強度既知の標準粒子(Rainbow beadsが有名です)を用いて測定されます(下図参照)。
通常、1細胞当りの標識された蛍光分子数で感度は表します。

 

この際に、ログスケールの蛍光パラメータを用いますが、デジタル方式のログ変換の方が、従来のアナログ方式のログ回路より、直線性に優れています。ただし、その際のA/D変換の分解能が18ビット以下だと、4ディケードログ(1:10000)を正確にカバーできませんので、蛍光定量測定には不適です。