FCMの原理入門講座

Ⅵ.光学検出系

1.光源

フローセルを通過する細胞に照射し、それらの蛍光と散乱光を測定するためには、特殊な光源を必要とします。光の方向、波長および光強度は、可能な限り一定としなければなりません。このような光を発するのはレーザー(LASER)だけです。

レーザーとは

レーザーという言葉は、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiationの頭文字から作られたものです「誘導放射による光の増幅」という意味です。高単色性、高指向性および位相の一致がレーザー光の特徴です。
一般的にフローサイトメトリーに用いられるガスレーザーは、アルゴンまたはヘリウムやネオンといった励起物質となるガスをつめた管と、ガスの中に大きな電流を通す電極から構成されています。
最初にガスの原子をイオン化するために高電圧のスタータが用いられます。イオン化されたガスのイオンは大きな電流により内部の電子を基底状態から高いエネルギーレベルの軌道へ押し出すように刺激され、励起します。これらの(押し出された)電子は、その後再び基底状態および低レベル状態へ戻ります。このときにエネルギーが光として放出されます。この光の波長は電子がどれだけ落下するかに依存します。ある特定の物質の電子軌道は数通りしかありませんから、放出される光の波長も数通りしかありません。
その中から使用する波長だけをプリズムで選択し、その光をミラーで増幅しレーザー光として使用しています。
レーザー管を流れる電流によって、励起される原子の数がコントロールされ、レーザー光の出力がコントロールされます。
近年は、固体レーザーが小型化すると共に、半導体レーザーが進歩して、サイトメトリーにも使用されています。

FCMに用いられるレーザー

従来は、大型で操作の複雑な水冷のガスレーザーが使用されていましたが、レーザー技術と高感度なフローセル検出系の登場により、現在はコンパクトで簡便な、寿命の長い空冷レーザーが主流になりました。 ガスレーザーでは、空冷アルゴンレーザ ー(488nm)や空冷ヘリウムネオンレーザー(633nm)、空冷ヘリウムカドミニウムレーザー(325nm)などがあります。 さらに、よりコンパクトで低電力な半導体レーザーや全固体レーザー(光励起半導体レーザー)も開発され、使用されています。

レーザー

小型レーザー

小型レーザー488nm

マルチレーザー

複数の励起波長を必要とする場合や、特殊な波長を必要とする場合は、複数のレーザーを搭載し、目的に応じて切り替えます。さらに、多くの蛍光色素を同時に測定する場合は、複数のレーザービームを同一直線上、または平行光線として、サンプルに同時に照射します。レーザーを搭載するレーザーベンチは、各種のレーザーが載せられる産業標準規格品のベンチが将来のレーザーにも対応できるので適しています。

レーザー光の集光

空冷ガスレーザーの場合、そのレーザービーム径は、直径が約900μ(ミュー)m程度です。その光強度の分布はガウス分布で、中心が最も強く周辺にいくにしたがって、弱くなります。これらのビームを楕円形に集光・収束させて、強度を高めるとともに、1度に複数の細胞が照射されないようにします。レーザー光はサンプル流に達する前に2つの円筒型集光レンズを通過し、楕円形のビームになります。 1番目のレンズでビームの幅を調整し、2番目のレンズでビームの高さを調整します。2つのレンズを通過した後、楕円形のビームはフローセル内の細胞に当たります。
楕円形のレーザービームは、中央で強度が最も高く、周囲に向かって少しずつ低くなっています。測定に最も適しているのは、光強度が最も高く、ほとんど低下しない中央の部分です。横方向に広げると、サンプル浮遊液の中の細胞の位置に多少のばらつきがあっても、円状ビームに比べてより均一な光強度を与えることができます。
サンプル圧を低くするとサンプル流は細くなり、中央の光強度の変動のより少ない部分を通過します。その結果、分解能が向上します。

レーザー光の収集

機種によっては、集光レンズを交換してビームの幅を変えることができます。幅の広いビームの方が光軸調整しやすく、サンプル流が横切る光強度の変動が少なくなり、分解能は向上しますが、得られる光の量は減少します。蛍光が比較的強い場合(例:DNA測定)には、このようなビームが有効です。
一方、粒子が非常に小さい場合には、レーザー光の大きさは狭ければ狭いほど、すなわち強度は強ければ強いほど散乱光測定には、有効です。
ただし、蛍光色素によっては、強い光で分解したり、飽和するケースがあります。
楕円ビームは、分解能を向上させる大変優れたアイデアですが、後述する積分パルスを使用しないと、蛍光量などのデータの直線性が低下します。
ビーム集光レンズは何種類かありますので、アプリケーションやレーザーの種類によって選択してください。

  警告   レーザー光を直接見たり、レーザー光の前を遮らないでください。手指の貴金属は外してください。

レーザー安全規格に関しては、財団法人日本規格協会 http://www.jsa.or.jp のWebサイトをご参照ください。