ハイスループット フローサイトメトリー HTFC

現状の不満点・問題点

迅速な測定は、ラボの生産性を高め、研究開発のスピードを高めます。特に創薬や安全性分野のスクリーニングの場合、データ解析を含めてハイスループットを要求されます。電子回路のデッドタイムを無くし、サンプルの数え落としの無い、高速型デジタルフローサイトメーターの登場により、適切なサンプル濃度ならば、瞬時に数万個の細胞を測定することが可能になりました。しかし、現在のフローサイトメトリーシステムでは、96ウエルプレート1枚を測定し解析する一連のプロセスには、約20分から30分間を必要とします。

 

 


次世代ハイスループット技術 「96ウェルを3分」

ハイスループットフローサイトメトリーは、既存のシステムの約10倍の処理能力を目指します。すなわち、96ウエル1枚を約3分間、384ウエル1枚を10分間程度で処理します。測定および解析の時間を、約10分の1の時間に短縮でき、研究の生産性を飛躍的高めます。

 

 


ハイスループット化の際のボトルネックを解消するための新技術は、

1.ハイスループット対応オートサンプラーの新技術

フローサイトメーターに、マルチウエルプレートのサンプルを迅速に自動で供給する必要があります。1ウエルずつ吸引して、フローサイトメーターに送り込む従来の方式のオートサンプラーでは、超高速化は不可能です。96ウエルすべてを一気に吸引して、順に連続して、フローサイトメーターに供給する新たな方式が提案されています。

2.超高速フローサイトメーターの新技術

フローサイトメーターは、1秒以内で測定を完了する必要があります。そのためには、5万個/秒以上の高速測定が必須です。

・ 高速シースフローの採用
測定の高速化を実現するためには、サンプル液供給量(ml/秒)を増やす必要があります。供給量が多く(つまりサンプルフローが太い)、サンプル濃度が高い場合、従来のフローサイトメーターは、回路のデッドタイムのため、細胞の数え落としをしました。高速型フローサイトメーターは、デッドタイムの無い高速回路を搭載していますが、光束の中に複数のサンプルが含まれる同時通過の場合、同時通過したサンプルは、数え落としします(アナライザーの場合、数%ならば問題はない)。その対応策として、シース圧を上げて、シースフローをより高速にすることにより、サンプルフローを細くして、同時通過の確率を低減させます。(MoFlo XDP高速セルソーターが採用した方法で、最大10万個/秒。)
・ フローセル内走査方式
シース圧を従来のままで、同時通過誤差を無くす試みとして、フローセル内を小さな光束を用いて高速で走査する方法があります。1細胞当たり数回走査し、そのパルスをガウス分布にフィットさせ求めます。測定分解能は劣化しますが、高速化が可能です。
・ アコーストフォーカシング
測定の高速化をするためには、サンプル供給量(ml/秒)を増やす必要があります。サンプル濃度が低い場合、同時通過誤差は生じませんが、濃度が薄いので測定時間がかかります。 サンプル供給量をさらに増やせば、サンプルフローが太くなり過ぎて、光束中心からサンプルフローが外れ、測定精度が悪くなります。新技術のアコーストフォーカシングを用いれば、超音波の力で、サンプル中の細胞だけを流れの中心に集めることができます。これにより、濃度が薄いサンプルを高速で測ることが可能です。
・ マルチフローセル並列処理

微細流路加工技術
高速化の常套手段は、並列化(パラレル処理)です。複数のフローサイトメーターを、1台のフローサイトメーターに内蔵させるアイデアがあります。複数のクオーツフローセルとスキャン光学系を用いて、同時に複数のサンプルを測定します。

 

3.データ処理

マルチウエル対応のデータ処理が必要です。イメージサイトメトリーのような膨大な情報量を扱うHCSではないので、複雑なアルゴリズムやMPUの強力なパワーを必要としません。

スクリーニング測定では、蛍光プレートリーダーのデータ解析機能を、フローサイトメトリーに流用すれば十分でしょう。高分解能型フローサイトメーターQuanta SC MPLには既に内蔵されていますが、現在、そのようなソフトウエアを内蔵する高速型フローサイトメーターは市販されていません。技術的なハードルは無く、早急な移植が待たれます。

 

 


まとめ

ハイスループットフローサイトメトリーシステムは、HT対応オートサンプラーと高速型フローサイトメーターとデータ処理のトータルシステムです。新技術の実用化が、ボトルネックを解消し、ハイスループットを実現するでしょう。
さらに、近い将来には、並列化処理によるパラレルソーティングも期待されます。