TCR(T cell receptor)は、T細胞の細胞膜上に発現している抗原受容体です。TCRは、α、β、γ、δ鎖のいずれかからなるヘテロ二量体です。およそ2~5%は、γ/δヘテロダイマーを表現し、循環しているT細胞の大部分(95%)は、α/βヘテロダイマーを発現します。
このように抗原の多様性を認識するには、TCRレパートリーで多くの特異性を必要とします。この多様性は、TCRの可変部V領域の遺伝子がランダムに組み替えられることにより生まれます。
IOTest Beta Mark TCR Vβレパトワキットは、ヒトT細胞のTCR Vβレパトワをマルチカラーフローサイトメトリーで解析する試薬キットです(研究用)。
TCR Vβレパトワをマルチカラーフローサイトメトリーで同時解析することにより、特定のリンパ球サブセットに限定したVβレバトワの偏りや特定のVβセグメントを発現するT細胞の機能的分化から、特定の抗原に対する宿主の細胞性免疫応答を検知し得る可能性があります。またレパトワキットは反応性が互いに排他的なものどうしを組み合わせた3種類のVβ抗体を2種類の蛍光色素で分別する革新的な染色ストラテジーによって、1本のチューブで3種類のVβを同時に検出します。各抗体は、FITC、PE、またはバランスを最適化したFITCとPEの混合色素で標識されています。
このキットは、TCR Vβレパトワ解析に必要なチューブを集約して、簡単かつ短時間の解析を可能にしています。さらに、第3の蛍光色素で標識したT細胞マーカー(CD3、CD4、CD8など)を併用して、T細胞サブセット毎のVβレパトワ解析も可能です。
キットは、24種類のTCR Vβ抗体(健常者のTCR Vβレパトワのほぼ70%をカバー)を重複無しに3種類ずつ組み合わせた、8本の抗体試薬パネルで構成されています。検体には全血を用い、染色後は1回洗浄します。PC5など第3の蛍光色素で標識したT細胞マーカー(キットには含まれておりません)を用いて、目的とするT細胞集団をゲーティングできます。このキットは、4カラー以上のマルチパラメータ解析でも使用可能です。様々な溶血法に対応しており、ベックマン・コールター社製フローサイトメーター、BD社製フローサイトメーターのいずれにも使用可能です。キットには感度設定用及び蛍光補正用のコントロール試薬は含まれていませんが、抗体パネルの1つ(vial-A)を設定/補正用コントロールとしても用いるため、このバイアルのみ倍量の試薬が入っています。
試薬 | 容量 | 製品番号 | 価格 | データシート |
---|---|---|---|---|
Multi-analysis TCR Vβ antibodies (3抗体×8種類) |
25検体 | IM3497 | ¥362,000 | ![]() |
正常末梢血のTCR Vβ
マルチアナリシス例(EPICS XLで測定)
"クロノグラム"によるTCR Vβレパトワ解析データの表示
Vial | Vβ | Fluorochrome | Clone | Isotype (species) |
---|---|---|---|---|
A | Vβ 5.3 | PE | 3D11 | IgG1(mouse) |
Vβ 7.1 | PE+FITC | Z0E | IgG2a(mouse) | |
Vβ 3 | FITC | CH92 | IgM(mouse) | |
B | Vβ 9 | PE | FIN9 | IgG2a(mouse) |
Vβ 17 | PE+FITC | E17.5F3 | IgG1(mouse) | |
Vβ 16 | FITC | TAMAYA1.2 | IgG1(mouse) | |
C | Vβ 18 | PE | BA62.6 | IgG1(mouse) |
Vβ 5.1 | PE+FITC | IMMU157 | IgG2a(mouse) | |
Vβ 20 | FITC | ELL1.4 | IgG(mouse) | |
D | Vβ 13.1 | PE | IMMU222 | IgG2b(mouse) |
Vβ 13.6 | PE+FITC | JU74.3 | IgG1(mouse) | |
Vβ 8 | FITC | 56C5.2 | IgG2a(mouse) | |
E | Vβ 5.2 | PE | 36213 | IgG1(mouse) |
Vβ 2 | PE+FITC | MPB2D5 | IgG1(mouse) | |
Vβ 12 | FITC | VER2.32 | IgG2a(mouse) | |
F | Vβ 23 | PE | AF23 | IgG1(mouse) |
Vβ 1 | PE+FITC | BL37.2 | IgG1(mouse) | |
Vβ 21.3 | FITC | IG125 | IgG2a(mouse) | |
G | Vβ 11 | PE | C21 | IgG2a(mouse) |
Vβ 22 | PE+FITC | IMMU546 | IgG1(mouse) | |
Vβ 14 | FITC | CAS1.1.3 | IgG1(mouse) | |
H | Vβ 13.2 | PE | H132 | IgG1(mouse) |
Vβ 4 | PE+FITC | WJF24 | IgM(rat) | |
Vβ 7.2 | FITC | ZIZOU4 | IgG2a(mouse) |
Vβ nomenclature from Wei,et al.(1994),Immunogeneticas 40,27-36.
5カラーTCR Vβレパトワ解析データの例
Beta Mark TCR Vβレパトワ解析キット(FITC,PE,FITC+PE)とCD45RA-ECD、CD27-PC5、CD4-PC7またはCD8-PC7の5カラー分析で、HIV感染症患者のCD4+ T細胞またはCD8+ T細胞と、そのナイーブ(CD45RA+CD27+)、メモリー(CD45RA-)、エフェクター(CD45RA+CD27-)サブセットのTCR Vβレパトワ同時解析を行った研究6)では、CD4+ T細胞全体では目立たないVβレパトワの偏りがエフェクターT細胞でより顕著に表れるとともに、CD4細胞数が200/μL未満の患者群ではナィーブCD4+ T細胞においても多くのVβレパトワが枯渇していることが示されています。