2.操作方法
悪性リンパ腫においてFCMでの解析目的の第一は、腫瘍性増殖している細胞の有無を調べることであり、DNA量の測定によってaneuploid cellsを検出できれば、一目瞭然である。DNAの染色方法は、未固定の新鮮生細胞を用い、界面活性剤による裸核化細胞をpropidium iodideにて染色する方法が、一般的なFCMにおいて最も精度が高く簡便である。
1)PI染色法(簡便・低コストで貴重な情報を提供)
体腔液および新鮮な生検組織材料から得られた浮遊細胞を用いる.5×104~5×105個の細胞を遠心して沈渣にし,0.1mLの 0.1% TritonX100/PBS(-)を加え良く混和して裸核化する。その後0.1mLの0.1%RNase/PBS(-)を加えて、室温にて5分間処理した後、0.2mLの100μg/mL Propidium Iodideにて氷中15分間DNA染色を行う。PIは終濃度50μg/mLで蛍光強度がプラトーとなり、CVも良好である。
DNA量の測定におけるPI濃度
2)PIとマーカーとの2重染色(まずはPIで単染色、必要に応じ2重染色)
DNA aneuploid cellを認めた時に、その細胞の系統や表面形質を明らかにしたい場合は、FITC標識の系統特異的もしくはサブセット抗体(CD2,3,4,8,19,20,13,36など)とPIとの2重染色が有効である。表面抗原を通常の方法で染色した後、その細胞沈差に2mLの冷固定液(0.75%ホルマリン・0.5%サポニン/PBS)を混和しながら添加して、氷中で5分間固定する。遠心にて上清を除去した細胞沈差に、5μg/mLのPI/PBS溶液を添加してDNA染色を染色する。PI/PBS溶液は、PI保存液を使用時PBSにて希釈して用いる。
DNAとマーカーの2重染色
なお、0.75%ホルマリン・0.5%サポニン/PBSの抗原の安定性は非常に高いが、各施設で使用する抗体の染色性については、事前に確認しておく必要がある。また、サイトグラムの変化についても、知っておく必要がある。
0.75%ホルマリン・0.5%サポニン固定と抗原の安定性
3)DNA量測定のための細胞保存(手軽で短期的な細胞保存が可能)
細胞沈渣に50~70%冷エタノールを混和しながら加え冷蔵保存しておくと、約6ヶ月は安定して測定できる。また、DNA遺伝子検査の検体としても利用可能であるため、余分な細胞やマーカー検査の測定後の細胞を回収し固定しておくことを勧める。