2.操作方法
JCCLSから造血器腫瘍細胞表面抗原検査に関するガイドライン(JCCLS H2-P)が出されている。本ガイドラインは造血器腫瘍として白血病、悪性リンパ腫の表面抗原解析を中心に策定されたものであるが、マーカー検査の全体的な注意点などの指針を示すもので、抗体や蛍光物質の選択、さらに解析方法など具体的な記述はないため、Cytometristの力に大きく影響される。
1)免疫染色法(抗体濃度の基本は、10~500ng/test)
細胞数は2×106~1×107/mLで0.1mL使用するが、さらに少なくても解析は可能である。ただし、細胞数が多い場合は抗体量が不足するので、細胞濃度に注意する。一般に市販抗体は、1テスト当たりの使用液量が規定されているが、中には必要量以上の抗体を含んでいることがあるので、各施設で検定することを勧める。検定方法は末梢リンパ球などを対象に染色し、十分な蛍光強度が得られるか?その蛍光強度は2倍、4倍、8倍と希釈してどのくらい変化するのか?を注意して調べる。
PC5標識CD45抗体の希釈試験
PC5標識CD45抗体を希釈したリンパ球とデブリス領域の分解能
(対象は健常人末梢血)
抗体 希釈率 |
陰性(m.ch) | 陽性(m.ch) | S/N比 |
---|---|---|---|
x1 | 0.746 | 59.8 | 80.2 |
x2 | 0.501 | 32.8 | 65.5 |
x4 | 0.463 | 17.4 | 37.6 |
x8 | 0.449 | 8.27 | 18.4 |
結果
蛍光標識CD16抗体の検定
蛍光標識CD16抗体のメーカー,クローンおよび蛍光色素の違いによる染色性の比較
(健常人末梢血を無前処理である洗浄なしの全血法にて染色し,リンパ球を対象に解析)
CD16 抗体濃度 |
A社 FITC |
B社 FITC |
C社 FITC |
C社 PE |
|
---|---|---|---|---|---|
x1 | 陽性率(%) | 20.6 | 27.1 | 19.7 | 19.1 |
x2 | % | 19.7 | 23.8 | 18.2 | 17.0 |
x4 | % | 18.1 | 22.5 | 17.4 | 15.3 |
x1 | 蛍光強度(m.ch) | 17.9 | 80.3 | 15.1 | 5.34 |
x2 | m.ch | 8.03 | 44.0 | 9.78 | 4.41 |
x4 | m.ch | 3.81 | 23.6 | 39.5 | 2.88 |
結果
2)1次スクリーニング(2重染色が安価で解析も容易である)
基本的には多重染色による解析が必要である。1次スクリーニングの例としてsIgκ/CD19、λ/19、γ/19、α/19、μ/19、δ/19、5/19、20/23、21/22、2/38、8/4、HLA-DR/3、45RA/4、45RO/3、7/10、16/56、30/3 の2重染色が挙げられる。なお、急性白血病で多用され「CD45 Blast ゲート」は、通常必要性はないが、ステージングの検査として骨髄を検査する際には、 CD45が弱陽性であれば浸潤の有無の解析に役立つため、予め腫瘍細胞の発現量の検索は有用である。また、腫瘍細胞が形質細胞様であれば、CD38強発現を確認し、「CD38 plasma ゲート」が有効である。ただし、骨髄血を対象にする場合には、CD38強陽性細胞が多いため、CD138が有用である。
なお、形質細胞を解析目的とする場合には、形質細胞は比重が重く、比重遠心法では単核球細胞分画として回収できないことがあるので注意が必要である。
3)追加検査
1次スクリーニングの結果、系統や病型を予想して、病型の診断や鑑別に必要となる追加マーカーを選択する。また解析方法も、症例毎に腫瘍細胞の割合や混在している細胞により、階層化ゲートやマーカーの組み合わせが変わるので、その点も十分考慮する必要がある。一般的な追加としては、解析目的細胞がT/NK細胞性で、未分化様であれば、CD1a、34、TdT、成熟細胞であればCD11b、25、57、71、122などを、B細胞性では、CLL/SLL様であればCD11c、25を、分化が進んだ形質細胞様であればCD138、cIg(κ、λ、γ、α、μ、δ)を追加する。時にはCD13、33などの骨髄系マーカーの検索も必要である。