2.操作方法
検体は腫脹したリンパ節や組織であるが、その他に末梢血、骨髄血、脳脊髄液や他の体腔液と様々である。リンパ節等の組織については、採取後直ちに処理するように心掛ける。
検体の移動には、生理食塩水をひたした無菌のガーゼでくるみ、乾燥を防ぐ。このとき生理食塩水中につけてしまうと、細胞が膨化するのでよくない。
また、FCMおよび染色体分析のために分割した組織材料の移動・運搬には、ペニシリン、ストレプトマイシンおよびアンホテリシンB添加Dulbecco’s PBS(-)に入れて冷蔵で運搬する。
1)組織の分割(挫滅に気を付け、捺印標本を作成)
リンパ節の長軸に垂直に割を入れる。両刃のカミソリを割り(フェザーS両刃カミソリ)両手に持ったカミソリを2枚重ね合わせ,片方の刃で軽く組織を押さえるようにして,もう片方の刃で引き切るようにすると、挫滅が少ない。一部で捺印細胞診を行い、検体はホルマリン固定用、凍結材料、新鮮材料(flow cytometry、染色体分析、FISH等)に適宜分配する。なお、捺印標本を多めに作製しておくと、免疫染色やFISH検査に流用できる。
ホルマリン固定に際しては、厚紙に張り付けてから固定すると、薄切時にtrimmingが少なくてすむ。また、大きなリンパ節では、被膜の一部を切っておくとartifactが少なくなる。固定時間は後の酵素抗体法のためには過固定を避けるため48時間以内を心掛け、24時間での統一が望ましい。
2)浮遊細胞の調製(十分量は1×107個の細胞)
組織からのリンパ球の回収は、歯科用コーク型などのピンセットにより組織をほぐすか、ハサミでミンスする。回収した浮遊細胞は、0.1%エリスロシン/PBSで生細胞数を算定し、マーカー検査の必要細胞(十分量は1×107個)をとる。細胞表面Ig(sIg)の検索のためには、遠心洗浄は最低3回行う必要がある。3回目の洗浄は塩化アンムニウム液による溶血操作を兼ねて良い。細胞数は1×107/mLを越えないように調整し、馬血清(10%)または牛アルブミン(1%)さらにヒト熱変性IgG(10%)で非特異反応を防ぐ。ただし、sIg、cytoplasmic Igの検索には、ヒト熱変性IgGを用いない。
生検組織の検体処理
細胞培養を目的に清潔操作を行う
なお、細胞回収後の組織片や残渣は、遠心洗浄したのち培養液を加えて、染色体分析と別に培養しておく。これは間質との結合性によって腫瘍細胞が組織から回収しづらい場合でも、短期間培養で遊離してくることがあるためであり、様々な追加検査に利用できる。
その他、体腔液(腹水、胸水、心嚢水、脳脊髄液、気管支肺胞洗浄液、等)は、細胞数の算定と標本を作製し、赤血球や顆粒球の混入量に応じて比重遠心法ならびに冷塩化アンモニウム溶血液にて、対象外の余分な細胞成分を除去して用いる。