FCMの原理入門講座

ソーティング系

4. 超高速ソーティング

 サンプル中に極微量含まれる細胞を分取する場合、目的の細胞を十分な量まで分取するには長時間を要します。より短い時間で希少な目的細胞を効率よく分取するために、超高速ソーティングが開発されました。
通常より高いシース圧(40から100psi)と高い振動数(60から200kHz)、さらに小さいノズル径(70ミクロン)を用いて、より多くの液滴(6万個から20万個/秒)を作成して、同時通過を減らし、サンプル速度(細胞数/秒)を上げることができます。検出系も改良されました。高速でサンプルがレーザー光の中を通過するので、レーザー照射時間が短くなり、蛍光強度が低下するので、より高感度の検出系が開発されました。
超高速ソーティングを用いれば、例えばサンプル中に1%含まれる目的細胞を105個分取するのに、従来は数時間かかっていたものが、数分間で完了します。ダメージの少ない分取が出来ます。
超高速ソーティングでは、超高速でパルス処理をする必要があります。そのため、アナログ方式であれば、パラレルアナログ処理回路をもつセルソーター(MoFlo)またデジタル方式であれば、パルス幅を最小化できるjet in Air方式のサンプリング周波数の高い(100MHz)ソーターになります。クォーツキュベット方式は流径が太くなるため、高速ソーティングには不適です。

マニアのための豆知識

ジェットインエアー方式 vs クオーツフローセル方式

クオーツフローセル方式(正方形または長方形のクオーツフローセルを使用)セルソーターでは、レーザー照射時の流れの幅が長径約250ミクロンから430ミクロンと広いため、サンプル・シース流の流速が遅く(最高6m/秒程度)、細胞からの蛍光などのシグナルパルスの幅は広くなります。高速時では多くの細胞を流すために、細胞と細胞の間隔が狭くなり、パルスが頻繁に重なります。重なったパルスは、どのような細胞か正しく識別できず、アボートされ、収率が低下します。培養細胞など大きな細胞の場合は、パルス幅が広くなり、特に顕著になります。また、流れの断面が大きな長方形から絞り込まれて細い円形になるため、サンプルの流速とその方向が変化する乱流現象が起こり、ディレイタイム(細胞がレーザー照射点から液滴形成点まで移動する時間)がばらついてソーティングの純度が低下します。高速時はサンプル流が太くなり、顕著になります。さらに、絞り込まれる際の乱流により細胞に複雑な力が加わるために、生存率に悪影響を及ぼします。セルアナライザーで一般的に用いられるクオーツフローセル方式は、低出力レーザー(10から20mV)で蛍光感度が高いという利点はありますが、高速ソーティングに重大な欠点を有します。

一方、ジェットインエアー方式セルソーターは、中出力のレーザー(50から100mV)を必要としますが、流れの形や幅は変化せず完全な層流で、ディレイタイムの誤差が生じません。また、直径70ミクロンと狭く、流速が速い(約30m/秒)ので、パルスの幅は狭くなります。高速時でも細胞と細胞の間隔は比較的広くなり、パルスが重なり合う頻度は、クオーツフローセル方式の約4分の1程度です。高い純度と高い収率が手に入ります。もし理想的なパルス処理回路があり、演算処理の際に数え落としをしなければ、1秒間に7万個の速度で100%の純度と約90%の収率を実現できます。






ソーティング速度と収率の関係 (シース圧60psi、細胞径が13ミクロンの場合)

 
細い円形の流れのまま、速度もその方向も変化しない(層流)。レーザー照射点から液滴形成点までの距離も常に一定で、一定のディレイタイム(高精度)。
したがって、純度が高い
  太い長方形の流れから、細い円形の流れに変化するため、速度と方向が変化する(乱流)。さらに移動距離も細胞の位置により異なるので、ディレイタイムがばらつく(低精度)。 したがって、純度が低下する。
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